名古屋高等裁判所 昭和26年(う)781号 判決
論旨は原判示の本件夜具たんすは物品税法第一条第一種丁類第七十六号家具中(ハ)の箱類に該当するものではなくその(イ)のたんすに該当するものと解すべく従つて被告人において右の物品税を逋脱する意思がなかつたと強調するものである。よつて審按するに、当審において取調べた証人土井実(名古屋国税局関税部消費税課企画係長)の証人尋問調書によれば、当時(昭和二十三年一月から五月頃迄)税務当局の家具に対する課税方針としては、大蔵省主税局長からの通牒(昭和十三年四月主秘第一四三号同追加同十四年四月同第十三号の二)に依り課税対象上所謂たんすと認めたものは幅八五糎以上の被服用に供するもののみに限定し、その他のものはたとえ「たんす」の呼称を有しても本件のような夜具入は即ち箱類に該当するものと認め、従つてその一個又は一組の価格千五百円以上のものには全て課税したことが明かであり、右の如き課税方針についてはその解釈上の疑義を避けるため、当時税務当局としても家具類製造業者に対しこれが周知方努力したものであることが窺われる。そして、右証人尋問調書と原判決挙示の証拠である被告人に対する検察官作成の供述調書とを綜合するときは当時家具類製造販売業者である被告人において本件夜具たんすが物品税法第一条第一種丁類第七十六号家具中の箱類として課税されるものであることを十分に了知しながら殊更に制規の帳簿に記載せずこれを秘匿しその物品税課税標準の申告を所轄税務署にしなかつたものであることが認められる。そこで物品税法第一条の家具の解釈上本件の夜具たんすが被服用のたんすと区別され箱類に属する家具として課税されることが妥当であるかどうかの点であるが(昭和二十六年一月政令改正による現行法は夜具たんすも被服用たんすと同様に取扱つている)当時の社会生活上の常識若くは取引通念より考察する場合には前示大蔵主税局長の通牒に準拠して課税したことを以てあながち不当ということはできないものと考へられる。よつてみれば原判決がその挙示の証拠により被告人に本件物品税逋脱の犯意があつたものと認定し、その判示各行為を物品税法違反に問擬したのは相当というべく所論の事実誤認又は審理不尽の廉あるものではない、されば論旨は理由がない。